~商標という「ものづくり」から、「ことづくり」に繋げるために~

商標の機能とは?

 

ものづくり、ことづくりという視点から、今回は「商標」という点をテーマにご説明致します。

 

「商標」とは、商品や役務を提供される需要者に、提供者を伝達する標識を意味します。例えば、商品に印刷されている「ロゴ」などは、商標の典型例と言えます。世間では様々な「商標」を目にしますが、そもそも、なぜ、「商標」という「もの」を「つくる」必要があるのでしょうか。

 

「商標」には、大きく分けて、

 

      「自他商品識別機能」(自分の商品等と他人の商品等を区別する機能)

 

      「出所表示機能」(同一の商標を付した商品等は常に一定の出所から流通されていることを示す機能)

 

      「品質保証機能」(同一の商標を付した商品等は、同一の品質を有していることを示す機能)

 

      「宣伝広告機能」(商品の差別化を図り、需要者に自分の商品を買いたいという意欲を起こさせる機能)

 

  の4つの機能があります。

  つまり、商標とは、ただの「ものづくり」ではなく、「商標」として登録することにより、ブランド価値を高める、宣伝効果を高めるなどの「ことづくり」に繋がるものなのです。

商標の登録方法について

 

それでは、商標を登録するにあたり、どのようなことに注意すれば良いのでしょうか。

 

ここで、商標登録も無料ではなく、登録にあたり下記のような費用を要します。

 

 

出願料=3,400円+指定商品(指定役務)の区分数×8,600円

 

登録料=指定商品(指定役務)の区分数×28,200円(権利の存続期間は10年)

 

 

 

  そのため、「ことづくり」のためであっても、何でも商標登録すれば良いというわけではありません。費用がかかることを意識しながら、登録する対象を選定する必要があります。

 

  そこで、商標の登録方法として、「ロゴと文字を一体化」するということを考えてはいかがかと思います。

 

 ロゴと文字、それぞれを商標登録する場合には、それぞれにつき、出願料や登録料が必要となります。これに対し、ロゴと文字を一体化して商標登録する場合には、1つの商標としてみなされるので、出願料や登録料は1つ分で済むことになります。

 

  このように一体化して登録しても、「類似」の商標に対する禁止権は及ぶことになりますから、同じ商品、同じ役務について、類似の商標を使用している者がいれば、使用の差し止め等を請求することが可能となります。

 

  ただし、ロゴと文字を一体化した場合、不都合がない訳ではありません。

例えば、途中で、ロゴと文字の位置を逆にして使い続け、商標登録した状態での使用を3年間行わなかった場合、他のライバル社から不使用審判取消の申立をなされる可能性があります。もし、途中で、ロゴと文字を入れ替えることが想定される場合には、ロゴと文字のそれぞれを商標登録した方が良いでしょう。

指定商品、指定役務の特定について

 

ところで、商標登録さえすれば、どのような業種でも商標について真似されないのかといえば、そのようなことはありません。真似されないのは、同一の指定商品または同一の指定役務に限られますので、その点は十分に注意する必要があります。

  そのため、商標登録をするにあたっては、商標で保護される範囲を明確にするためにも、「指定商品」と「指定役務」の特定は非常に重要になってきます。そして、この特定は、自社の商品または役務(サービス)のラインナップを明確化するという意味でも必要になる作業です。その内容は、商標登録の出願前に十分に検討する必要があるでしょう。

®マークとTMマークについて

 

さて、商標の出願後、概ね8か月程度の期間を経て、特段問題なければ、商標の登録ということになります。もっとも、他社の模倣を防止するにあたり、できれば商標そのものに、登録済みの商標であることを記載したいところです。

 

  そのために、登録された商標には、「®」を付けると良いでしょう。この「®」とは、商標として登録済みであることを意味しますから、このマークのついた商標を模倣してしまうと、下記のようなペナルティが発生する可能性が生じ得るため、模倣されにくいことになります。

 

 

    商標の中止、差し止め請求

 

    損害賠償請求(損害の立証にはやや難あり)

 

    信用回復措置(謝罪文の公表)

 

    買取請求

 

    刑事罰

 

商標法78条(個人)10年以下の懲役or1000万円以下の罰金

 

商標法82条(法人)3億円以下の罰金

 

 

 

ただし、商標でないロゴ等に「®」を付けると、虚偽の表示(商標法80条)として、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金刑が課せられる可能性がありますから、注意が必要です。

  もし、商標の出願中の場合には、「TM」というマークを使用することをお勧め致します。「TM」とは、トレードマークの略ですが、このマークを使用することにより、商標出願中の可能性があることを公示することになりますので、ある程度、模倣防止策としての効果を期待することができます。

商標という「もの」をつくることから、「ことづくり」へ

 

これまで、商標についてのご説明をさせていただきました。ロゴや文字などで商標を作り、登録することは、その模倣を防ぐだけでなく、自社のブランド価値等を高めるという、正に「ことづくり」に資するものであります。もし、自社のロゴ等を作成した際には、その価値の向上を図るために、商標登録をすることを検討してはいかがかと思います。